以前、阿部寛さん主演のドラマ『ドラゴン桜』(TBSテレビ 2021年6月6日放送)で、
ゲスト英語講師が「リスニング中にメモを取っちゃダメ。耳に集中!」と言っていました。
YouTubeなどで有名な予備校の先生方も、今も同じことを言っています。
でも、やはり私は、「メモを取っていい」という共通テストでは、
メモを取ったほうが点数を取りやすいと思います。
共通テストは『記憶力』を測る試験ではありません。
共通テストは情報量が多く、しかも出題される問題も様々で、
聞きながら大事なポイントを記憶していくのは至難の業です。
メモを取っても構わないという指示は、「メモを取ったほうが解ける」ことを意味します。
ちなみに私はメモを取れば満点を取れますが、メモを取らなければ無理です。
それなのに、メモを取るなという先生が多いのはなぜでしょうか。
これには2つの裏事情があると思っています。
1つ目は、先生自身がメモの取り方を習っていないから。
2つ目は、先生が、大学で学生が必要な英語のスキルを知らないから。
今日は、その1つ目について、お話ししたいと思います。
<1>先生がメモの取り方を習っていないから
たくさんの英語を聞きながらメモを取る「ノートテイキング」。
このスキルを、私を含めた大人世代のほとんどの人が、中学、高校で習っていません。
つまり、多くの先生が学生時代に習うことなく教師となり、
英語を教えている状況なのです。
日本で実施されている英語の試験で、ノートテイキングが本当に必要な試験は、
TOEFL®くらいしかありません。
この試験は、海外の大学や大学院に入るために必要な試験なので、
その必要がない場合はノートテイキングを学ぶ必要もないでしょう。
TOEFL®は、大変難しい試験とされています。
リスニング問題では、事前に1つも問題を見ることができません。
白紙の紙と鉛筆が渡され、流れてくる音声を聞きながら、要点をメモしていきます。
テーマは社会学や天文学、政治学などアカデミックな内容で、
他の試験には出てこないような語彙もたくさん出てきます。
そして、すべて聞き終わった後に、次から次へと問題が表示されます。
ですから、正解するには自分のメモだけが頼りです。
私はこの試験の対策を、日本とアメリカで教えています。
ノートテイキングができなければ全く点数が取れない試験ですから、
受験生はこのスキルが必須です。
これは、ちゃんと教えれば、皆、出来るようになります。
そして裏を返せば、「ちゃんと教えなければ自力ではできるようにはならない」というスキルです。
結局、多くの先生が、ご自身も学習者として習う機会がなく、また指導する機会もないので必要性を感じない。
だからノートを取るメリットを感じることもありませんし、また教え方もわかりません。
「聞くだけに集中したほうがリスニング問題が解きやすい」というのは、
ご本人がこのスキルを身につけていないことを端的に表しているのです。